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| 掲載内容 | 掲載日 | 補足事項 |
| 46歳男子 小腸線がんと向き合って | 2017-8-02 | 小腸線がんステージ４の突然の宣告に接して |
| 厳しいことを言いますが受け止めてください」 予期せぬステージ４告知…記者の闘い 産経新聞 2017-8-02 坂井記者のがんをめぐる経緯 産経新聞政治部記者の坂井広志（４６）は今、昨年末に発覚したステージ４の小腸腺がんと闘っている。深刻なス深刻なステージ４に進行するまで、なぜ病魔に気付かなかったのか |
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| 「明確な症状が表れない限り気付かない」と坂井は振り返る。腫瘍ができた場所が、がんになりにくいといわれる小腸だったことも災いした。 最初に異変が起きたのは水戸支局のデスクとして勤務していた昨年１０月ごろ。息切れしやすいことに気が付いた。体力の衰えで片付けていたが、症状は徐々に悪化していった。不安になり、水戸市内の中規模病院で血液検査を受けた。 極度の貧血が認められ、医師の指示ですぐに、国立病院機構「水戸医療センター」で精密検査を受けた。肺から全身に酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビンや鉄が、下限基準値を大幅に下回っていた。 〈このとき診てもらった女医から「ヘモグロビンを作る鉄すらない状況です。突然こんな低い数字になるなんて考えられないです。高山でトレーニングしているようなものです。貧血なので胃腸から出血があるかもしれません」と言われ、愕然（がくぜん）とした〉 胃の内視鏡検査を実施したが異常は見当たらず、次は大腸を内視鏡で検査する段取りとなっていた。その検査に至る前に病状は急変した。ある夜、デスク業務中に急に激しい吐き気を催し、約１０回も嘔吐（おうと）した。 水戸医療センターに駆け込み、コンピューター断層撮影（ＣＴ）検査を実施。ここで初めて、小腸に腫瘍があり、腸閉塞（へいそく）になっていることが判明した。そして１２月１９日、腸閉塞を治す目的で、開腹手術を行った。 １２月２８日、担当医に「厳しいことを言いますが、しっかり受け止めてください」と前置きされたうえで、９日前に受けた腫瘍の摘出手術と病理検査の結果を告げられた。 〈良性であることを信じていた私は全身が凍り付いた〉 腫瘍は悪性だった。ステージ４の小腸腺がん。担当医は「末期ではありません。厳しい結果ではありますが、やりようはあります」と言って、説明を続けた。 手術にかかった時間は約４時間。手術は成功したが、腹部にがん細胞が散らばる「腹膜播種（はしゅ）」だった。すべての腫瘍は取り切れなかった。 〈自身の身体について健康そのものと自負し、政治記者としてこれまで取材に邁進（まいしん）してきた。体力にも自信があった。それだけに自分ががんになるとは想像したことはなかった。頭の中は真っ白になり、話を一生懸命聞いてはいるものの、何を言っているのか分からない状態に陥った。それは地獄に突き落とされた気分だった〉（敬称略） 告知を終えた担当医が退室すると、坂井の目から涙があふれ出た。腰が砕けそうになる夫を妻（４２）が抱きかかえた。手術の日、概要を告げられた妻は「このままだと主人はどれぐらい生きられるのですか」と率直に問いただした。医師の答えは「治療をしなければ１年もたないでしょう」だった。 〈当時、一人娘の年齢は１歳。再発する可能性が低くなく、内臓への転移もいつ起こるか分からない。しかも４６歳という働き盛りでがんに直面－。自分は死んでしまうのか。だが、娘のためにも死ぬわけにはいかない。なんで自分が…。告知を受けたその日、不安や悔しさばかりが頭をよぎり、とても冷静にはいられなかった〉 小腸腺がんは希少がんとして知られ、国立研究開発法人「国立がん研究センター」によると、年間発症者数は人口１０万人に対し０・２２～０・５７人とされる。早期発見が難しい上に、同じ消化管原発の胃がんや大腸がんに比べ悪性度が高い。手術で完全に摘出しても、約半数は再発するという。希少性故に治療面での開発は進んでおらず、標準治療は確立されていない。 〈症例が少ない以上、少しでもデータの蓄積のある病院で治療を受け、絶対に生き抜く。そう決意した〉 坂井は今年２月、東京本社政治部に戻った。異動に先立つ１月５日、東京・築地の国立がん研究センター中央病院で、担当医から「がんのすべてを消すのは難しいが、治る可能性は０％ではない。継続的に治療を行い、がんを制御して今の元気さを保ちましょう」と治療方針を説明された。 〈治る可能性は０％ではない－。この言葉には衝撃を受けた。裏を返せばほとんど治る可能性はないということか…。そう思うと暗澹（あんたん）たる気持ちになった〉 希少な小腸腺がんの標準治療は確立されていない。大腸がんの治療に準じた形で、１月１３日から抗がん剤治療を始めた。それは「ゼロックス療法」と呼ばれ、点滴による「オキサリプラチン」の投与と錠剤の「ゼローダ」を併用する。１クールは３週間。点滴投与を１回行い、錠剤を２週間飲み続ける。残る１週間は休薬期間となっている。 〈副作用は想定していたとはいえつらい。特に冬場は副作用が顕著に出るため、「何でこんな目に遭わないといけないんだ」とがんを患ったことへの悔しさが胸を突き上げ、涙をこぼすのは日常茶飯事だった〉 オキサリプラチンの副作用は吐き気と手足、顔のしびれ。冷たいドリンクを飲むとのどが締め付けられた。強い冷風が顔に当たると目を開けられなかった。ゼローダの副作用で手や足が赤く腫れ、痛みが生じた。皮膚が黒くなり、シミが増えるといった皮膚の変化や色素沈着、軽いめまいなども起きた。 〈若くないと耐えられない。体力が衰えた高齢者は化学療法を続けることができるのだろうか。自分は何歳まで耐えられるだろうか、と不安は絶えない〉 ４クール目の初日、２カ月ぶりにＣＴ検査を受けた。腹膜に散っているがん細胞のうち腹の底にあった約１センチのがん細胞が点になっていた。内臓への転移も腹水もなかった。 〈がん細胞が小さくなったことは、副作用に耐えた結果といえる。診察室を出た瞬間、感激のあまりガッツポーズ。気付いたら自然と涙があふれ出ていた〉 その後、がん細胞に目立った変化はない。新たな副作用も出てきた。今後最低約１年間は化学療法を続けるという坂井は、闘病を通じてがんに関する課題が見えてきたという。 〈まずは仕事と治療の両立だ。仕事は生きることへのモチベーションになる。家族を養わなければならないことや、治療費のことを考えれば、働く世代の多くは就労の継続を望んでいるのは間違いない。ただ、会社側の理解なくして治療との両立は難しい〉 思春期の青少年や若い世代への支援も欠かせない。学校の授業や就職、結婚、出産などに影響を及ぼしやすいだけに、きめ細かい支援が必要だ。そして、子供にショックを与えずに、いかに親ががんであることを伝えるか。世間に氾濫する民間療法の是非、高齢者がん治療のあり方、免疫治療薬の保険適用の行方－なども課題に挙げられる。 〈治療の効果にしても、抗がん剤の副作用にしても個人差がある。このため多種多様な情報が乱れ飛んでいるが、最善の治療を意味する「標準治療」に勝るものはないと信じ、今でも治療を続けている〉（敬称略） |
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